「留守番電話」

『数年前、友人和哉さん(仮名)の彼女の彩子さん(仮名)が事故で死んじゃいました。
周囲からも、凄く仲が良いと言われていて、さらには近々結婚するのではないかと話されていました。
そんな時でした。
彩子さんの死に方はとても悲惨なものでした。
彩子さんが会社での仕事が終わり、和哉さんの家に寄ることを、近くの公衆電話から和哉さんの家の留守番電話に入れている時でした。
その公衆電話にトラックが突っ込み、彩子さんは死にました。

ですからね、和哉さんの電話には、
「あ、私。今から行くから待っててね。」
という彩子さんの声の後に、タイヤのスキール音が入っていたそうです。
そのあとの、彩子さんの悲鳴。公衆電話の破壊される音。
彩子さんの事故の全てが、録音されてしまっていたのです。

それからは和哉さんは仕事を辞めて、外出もせずに、見ているのが辛いほど痩せ衰えていきました。
しかし、私達は一生懸命に和哉さんを励まし続け、その甲斐があったのか、和哉さんはなんとか、
「俺がこんなんじゃ、あいつも悲しむよな。」
と立ち直り始めました。

そしてその数日後。
やはり彩子さんとの思い出が多い今の部屋は和哉さんにとって辛すぎるらしく、和哉さんは引越しをするすることになったので、仲間皆で引越しを手伝うことにしたのです。
朝から作業を始めて、夕方近くにはほとんどの物を運び終えました。
その時なんです。
突然でした。
友達の外していた電話から、あの時の留守番電話の音声が流れ始めたのです。
「あ、私。今から行くから待っててね。」

それを聞いてしまった和哉さんは真っ青になり、またふさぎこんでしまいました。
他の友達が、電話を外していた友達にを外に連れ出しました。
「なんで気を付けないんだよ!和哉、せっかく立ち直ったのに・・・。」
と少し怒鳴りました。
しかし、その友達は、ぼそっとこう言ったのだそうです。

ありえないんだよ・・・。コンセントは繋がってなかった・・・。でも、それどころかテープを先に取り出しておいたのに・・・。」』

ガガッ、ピー